
スーパーの駐車場の端、庁舎の前の空き地、工場の昼休みの敷地。ふだん使っていない場所に、決まった曜日にキッチンカーが来るようにしたい。そう考えたときに調べるのが「誘致」の方法です。
誘致は、その日だけ来てもらう手配とは進め方が違います。出店者は、売れる見込みがあれば出店料を払って来てくれます。売れなければ、出店料を下げても続けて来てもらうのは難しくなります。 場所を整え、条件を決め、出店者を探し、続けてもらう。この記事ではその順に、施設や土地をお持ちの方、自治体のご担当の方に向けてまとめます。
数字は、出店コネクトナビの募集の集計です(2026年10月17日時点。公開していて募集を締めていない「掲載中」が129件、うち常設118件。募集終了を含めると、これまでに317件)。
先に結論です。
- 誘致の手順は、場所の条件 → 貸す権限と許可 → 料金の形 → 募集 → 試験期間の5つ
- 当社に掲載中の129件のうち118件が常設です。場所は、スーパー・ディスカウント店、商業施設、大学・専門学校の3つで112件を占めます
- 料金の形は場所の種類で分かれ、学校の22件はすべて売上の歩合、商業施設は24件中17件が固定額でした。施設の側がお金を払う形の常設の募集は0件です
- 続けて来てもらうには、曜日と時間をそろえる、売上の記録で条件を見直す、同じ店か入れ替えかを決める、やめるときの予告を決めるの4つを、始める前に決めておきます
誘致と手配の違いは、お金の向き
呼ぶ言い方のうち「手配」や「派遣」は、イベントや社内行事の日に来てもらう話です。来場者に無料で配るなら、主催者が商品の代金を払います。
誘致は、自分の場所に、毎週・毎月続けて来てもらう話です。お客様は自分で買い、出店者はその売上の中から出店料を払います。施設や土地の側から見ると、お金は入ってくる側です。当社に掲載中の常設118件にも、施設の側が売上保証や商品の買い取りでお金を払うと書いた募集はありませんでした。
ただし、人通りが読めない場所では、施設の側が売上を保証する形をご相談することもあります。呼ぶ側にかかる費用の形はキッチンカーを呼ぶ費用にまとめています。
【実データ】いま誘致の募集を出している場所
掲載中の9割が常設
| 掲載中 | これまでに掲載(募集終了を含む) | |
|---|---|---|
| 常設(毎週・毎月の出店場所) | 118件 | 217件 |
| イベント(日が決まった催し) | 11件 | 100件 |
| 合計 | 129件 | 317件 |
イベントの募集は開催日が過ぎると終わるので、掲載中の数は常設に寄ります。募集終了を含めたこれまでの317件で見ても、3件に2件は常設です。
場所はスーパー・商業施設・学校が中心
常設118件を、場所の種類と出店料の形で分けました。場所の種類は、案件名と登録の区分から機械的に分けています(総合スーパーが核になった大型店の一部は「スーパー」に入っています)。
| 場所の種類 | 常設 | 固定額 | 売上の歩合 | 固定と歩合の併用 | 問い合わせ・応相談 |
|---|---|---|---|---|---|
| スーパー・ディスカウント店など | 66件 | 32件 | 3件 | 4件 | 27件 |
| 商業施設・モール | 24件 | 17件 | 2件 | 4件 | 1件 |
| 大学・専門学校など | 22件 | 0件 | 22件 | 0件 | 0件 |
| そのほか(企業の敷地・ゴルフ場・貸しスペースなど) | 6件 | 0件 | 4件 | 1件 | 1件 |
| 合計 | 118件 | 49件 | 31件 | 9件 | 29件 |
併用9件のうち2件は、歩合で計算した額が下限に届かない日は下限の額を払う「最低保証」の形です。
件数の多さは、そのまま「よくある条件」とは限りません。 常設118件のうち81件は、4つの小売チェーン(店名で分けたもの)の店舗ごとの募集です。固定額49件のうち32件は2つのチェーンの募集で、問い合わせ・応相談29件のうち25件は1つのチェーンの募集でした。同じチェーンの中では、店が違っても形や額をそろえていることが多いです。
料金の形は、場所の種類で分かれる
学校は22件すべてが売上の歩合で、率もすべて10%でした。歩合なら、学生が少ない時期の日は出店料も小さくなり、出店者が続けやすい形です。商業施設は固定額が中心で、併用の4件は固定額に率を足す形でした。
常設の出店料の欄に率を書いた40件(併用を含む)では、10%が28件、15%が8件、20%が4件です。常設118件のうち出店料の欄で税に触れた60件は、すべて税別か「+税」の書き方で、「税込」は0件でした。
誘致の手順は5つ
1. 場所の条件を確かめる
見るのは、区画、車の出入り、設備、人の流れの4つです。
- 区画:車1台と、お客様が並ぶ場所、ゴミ箱や看板を置く場所。埼玉県が県庁の敷地で出した募集は1か所16㎡(車と看板などを含む)を2か所、美濃加茂市の生涯学習センターの募集は約20㎡(4m×5m)でした
- 車の出入り:入口の高さと幅、段差、曲がり角。営業中に車を区画に置いたままにできるかも決めます
- 設備:電源と水道は、無くても募集は出ています。当社の常設で設備の欄に記入がある107件のうち、水道「無し」は54件、電源「無し」は22件でした。どちらも、募集を作る画面で最初は「有り」が選ばれている欄です(水道「無し」のうち39件は2つのチェーン、電源「無し」のうち11件は1つのチェーンの募集)。電源が無い場所では、出店者が発電機や蓄電池を持ち込みます。美濃加茂市の募集は、音を避けるため発電機を原則として使わせず、市のコンセントを1日140円で貸していました
- 人の流れ:誰が、いつ買うか。昼休みの社員や学生、夕方の買い物客などで、出す曜日と時間が決まります。埼玉県の募集は、職員数(約5,600人)・1日の来庁者数(約1,000人)・休憩時間・庁舎の中の食堂まで書いていました。出店者が売上を見込む材料です。決め方は定期開催の曜日と時間帯の決め方にあります
2. 貸す権限と、要る許可を確かめる
- 借りている土地なら、貸主の承諾:民法は、借りている物を貸主の承諾なく又貸しすることを認めていません(第612条)。テナントとして入っている建物の前や、借りている駐車場に呼ぶなら、先に所有者や管理会社に確かめます。駐車場の契約の進め方は駐車場をキッチンカーに貸すにはにまとめました
- 区画は敷地の中に:道路に店を出すには、警察署長の道路使用許可が要ります(道路交通法第77条第1項第3号)。お客様の列が歩道にはみ出さない配置にします
- 営業許可は出店者が取る:営業許可は、営業する人が都道府県知事などから受けます(食品衛生法第55条)。施設は写しを預かり、出店先の区域で使える許可か、期限が切れていないかを確かめます。区域の考え方は営業許可は複数県で要るか、預かる書類は出店に必要な書類にあります
- 保険:出店者のPL保険・賠償責任保険の証券の写しをもらいます。施設の側で入っている保険が、敷地の中での出店者の事故をどこまで含むかは、保険会社に確かめてください
- 庁舎・公共施設・公園:庁舎などの敷地は、行政財産の使用許可を出して使ってもらう形があります(後の章で説明します)。公園は都市公園法と自治体の条例の決まりなので、公園での出店に要る許可を見てください
3. 料金の形を決める
出店者が払う出店料の形は、大きく3つです。
| 形 | 施設の受け取り | 合いやすい場所 |
|---|---|---|
| 固定額(1日◯円) | 売上にかかわらず一定。売れない日の負担は出店者 | 人通りが読める場所 |
| 売上の歩合(売上の◯%) | 売上に応じて増える・減る | 人通りが読めない場所、始めたばかりの場所 |
| 歩合+最低保証 | 歩合の額が下限に届かない日は下限の額 | 歩合にしたいが、受け取りの下限を決めたい場所 |
固定と歩合のどちらが出店者に軽いかは、1日の売上で決まります。固定額 ÷ 歩合の率が分かれ目で、固定5,000円と歩合10%なら、売上5万円の日に同じ額になります。それより売れない日が多い場所なら、歩合のほうが出店者は来やすくなります。最低保証は、歩合の額と下限を比べて高い方を払う形で、足し算ではありません。どちらの意味かを募集に書いておきます。
あわせて決めるのが税です。国税庁の案内では、土地の貸付けは原則として消費税がかかりませんが、貸付期間が1か月に満たない場合や、駐車場など施設の利用に伴って土地を使わせる場合は、消費税がかかります(タックスアンサー No.6213)。1日ごとに区画を使ってもらう出店料がどちらに当たるかは契約の形で変わることがあるので、税務署か税理士に確かめてください。歩合なら、率をかける売上が税込か税抜かも決めます。計算の違いは売上報告と出店料の計算にあります。
金額の目安(出店者が払う額の集計)は出店料の相場にあります。当社に載せる場合、出店者が払う出店料は、施設の受け取り分と当社の運営分を合わせた額です(内訳はご相談のうえで決めます)。出店料は当社が出店者へ請求し、施設の受け取り分は当社からお渡しします。
4. 募集を出す
出店者の探し方は3つです。
- 近くで営業している店に直接頼む:1店に絞って頼むなら、文面は出店依頼メールの例文が使えます
- 募集要項を作って広く募る:曜日と時間、区画と設備、出店料(税と歩合の基準)、書類、やめるときの予告を書きます。書き方とひな形は出店者募集要項の書き方にあります
- 誘致・手配の会社に任せる:出店者を探して曜日ごとに組み、当日の連絡まで任せる形です。後で紹介する埼玉県の県庁の募集も、キッチンカーの出店を取りまとめる事業者を1者選ぶ形でした
出店コネクトナビでは、無料の会員登録で「お店を呼びたい」を選ぶと、ご自身で募集を載せられます。掲載料・登録料・成約手数料はかかりません。掲載は承認制で、出店料などの条件を運営が確かめてから公開します。区画の条件や出店料の決め方から相談したい場合は、キッチンカーの誘致・手配のページからお問い合わせください。
5. 試験期間を決めて始める
始める前に、何か月続けたら、何を見て、続けるかどうかを決めるかを決めておきます。飯能市は、公共施設の空きスペースにキッチンカーなどを出す試み(トライアル・サウンディング)の実施期間を2026年4月から6月までの3か月とし、終了後に観光協会が結果報告書を出して、市が事業にするかを検討する形にしていました(その期間の使用料は免除)。見る項目は、出店回数・来場者数・売上、利用者の満足度、出店料・手数料が妥当かなどです。
民間の場所でも、最初の数か月は試しの期間で、そのあと曜日や料金の形を見直すことがあると募集に書いておけば、途中で条件を変えても、出店者に「話が違う」と受け取られにくくなります。
続けて来てもらうための4つの工夫
曜日と時間をそろえて、知らせる
利用者が「火曜日はキッチンカーの日」と覚えられるよう、曜日と時間をそろえます。館内の掲示、社内のお知らせ、店内の放送など、利用者に届く手段を持っているのは施設の側です。屋外に看板を続けて出すなら、屋外広告物の条例も確かめます。出せない区域や許可が要る区域・大きさは条例で決まり、自分の敷地の看板は基準の中なら除かれることもあるので、自治体の担当課に聞いてください(国土交通省「屋外広告物制度の概要」)。
売上と来客の記録で、条件を見直す
続けるかどうかの材料は、売上と来客の数です。埼玉県の募集は、四半期に1度、売上高と提供食数の報告を求めていました。美濃加茂市は、出店日ごとに来客数・売上金額・よく売れたメニュー・利用者の声などのアンケートを出してもらう決まりです。
当社では、出店者が出店のたびに売上を報告し、天候・来客数・品目ごとの販売食数も入れます。この報告は、まとめたExcelにして施設へお渡しできます(ご自身で募集を載せた場合は、管理画面から保存できます)。売れない曜日を休みにする、メニューの重なりを避ける、固定から歩合に変える、といった見直しは、この記録を見ながら出店者と相談します。
同じ店に通ってもらうか、入れ替えるかを決める
同じ店なら常連ができ、入れ替えれば飽きられにくくなります。美濃加茂市は、1つの出店者が出られる日を募集月ごとに1日までにしていました。埼玉県は、メニューや価格帯を決めるにあたって、いつも同じキッチンカーでなくてよいとしています。どちらにするかを決めて、募集に書いておきます。
やめるとき・休むときの予告を決めておく
埼玉県の募集では、事業者の都合でやめるときは終了を希望する日の2か月前までに文書で申し入れ、県の行事で営業を止めてもらうときも、原則として2か月前までに伝える決まりでした。民間の誘致でも、双方が何日前に伝えるかを決めておくと、急に来なくなる、急に断られる、といったことを防げます。
1日ごとの取り消しの扱いは、当社ではキャンセルポリシーで決めています。天候などで施設・主催者が中止を決めた場合、出店者にキャンセル料はかかりません。
自治体が庁舎や公共施設に誘致するとき
庁舎や公民館などの敷地は、自治体の行政財産です。地方自治法は、行政財産をその用途や目的を妨げない限度で、使用を許可できるとしています(第238条の4第7項)。この許可による使用には借地借家法が適用されず(同第8項)、公用・公共用に必要になったときや、許可の条件に違反したときは取り消せます(同第9項)。使用料も取れます(第225条)。余裕のある部分を貸し付ける形(同条第2項第4号)もありますが、下の3つの例はどれも使用許可でした。
公表された3つの募集を並べると、決め方には幅があります。金額は、出店する側が自治体に払う使用料です。
| 埼玉県(県庁舎) | 飯能市(公共施設) | 美濃加茂市(生涯学習センター) | |
|---|---|---|---|
| 時期 | 2026年6月に募集要項を公表 | 実施期間は2026年4〜6月 | 2025年12月の募集要項 |
| 選び方 | 企画提案を審査して1者 | 観光協会が出店者をまとめ、一括で許可を受ける | 事前登録した出店者が、市の指定する日に出る(希望が重なれば抽選) |
| 使用料 | 2026年度分(9月〜翌3月)で122,038円。各月「1㎡825円×32㎡×開庁日数÷月の日数」の合計で、税別 | 実施期間中は免除 | 土地660円/日、市の電気を使うと140円/日を加算 |
1者に任せた埼玉県は企画提案で選び、多くの店に開いた美濃加茂市は事前登録と日の割り振りで選んでいます。両市とも営業許可・保険を条件にし、食品衛生責任者も確かめる形です。窓口は、財産を管理する課(埼玉県は総務部管財課、飯能市は資産経営課)のことも、募集を受け持つ別の課(美濃加茂市は市民協働部ひとづくり課)のこともあります。お祭りなど1日の行事の公募は自治体イベントにキッチンカーを公募する方法にまとめています。
よくある質問
同じ出店者に毎週来てもらうのと、日ごとに入れ替えるのでは、どちらがよいですか?
常連をつくりたいなら同じ店、飽きられにくくしたいなら入れ替えです。同じ店なら休む日の代わりを、入れ替えるなら1つの店が出られる日数の上限を決めておきます。
市役所や公民館の敷地にも誘致できますか?
できます。庁舎などの行政財産は、用途や目的を妨げない限度で使用を許可できます(地方自治法第238条の4第7項)。埼玉県や美濃加茂市のように、使用料と出店の条件を決めて公募する例があります。窓口は自治体によって違い、財産を管理する課のことも、募集を受け持つ別の課のこともあります。
歩合にしたら、売上はどうやって確かめますか?
出店者からの売上の報告で確かめます。率をかける売上が税込か税抜か、報告の期限、来客数など一緒に出してほしい数字を、募集に書いておきます。当社では出店ごとの報告をまとめたExcelを施設へお渡しできます。
まず数か月だけ試すことはできますか?
できます。期間と、見直す時期、そのとき見る数字(売上・来客数など)を先に決めて、募集に書いておきます。当社に載せた募集は、管理画面で「募集終了にする」を押すと締められ、あとで再開もできます。
まとめ
- 誘致は、出店者が出店料を払って続けて来る形が基本。当社の常設の募集で、施設の側がお金を払う形は0件
- 手順は、場所の条件 → 貸す権限と許可 → 料金の形 → 募集 → 試験期間の5つ
- 料金の形は場所で分かれる。学校はすべて歩合、商業施設は固定額が中心
- 続けてもらうには、曜日と時間をそろえ、売上の記録で見直し、同じ店か入れ替えかを決め、やめるときの予告を決める
- 庁舎や公共施設では、行政財産の使用許可で出店してもらう例がある。選び方と使用料は自治体ごとに違う
場所ごとの進め方は、スーパーの駐車場・大学・専門学校・社食・福利厚生・マンション・遊休スペースの記事にあり、呼びたい方向けの記事は記事の一覧にまとめています。地域ごとのご相談は、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県などのページからもできます。